Bonjour!,c’est pompon!
フランスの出生率は高く、3人から4人、それ以上に子供を持つカップルも珍しくありません。その「産んでいる国フランス」での出産は、日本とどう違うのでしょうか?
今回は、フランスでの出産についてお話ししたいと思います。
里帰り出産はない
日本だと、出産が近づくとご主人を残して実家に戻られる、いわゆる里帰り出産をする女性が多いですよね。大変な時ですから、何かと実家の家族に助けてもらえるのは心強いでしょう。
この里帰り出産の感覚、フランス人にはありません。子供は夫婦で育てるものですから、産後すぐからの数週間を父親なしに子育てをするというのは、彼らの目にはとても不思議に映るようです。
では在仏日本人女性たちはどうでしょうか。ご主人も日本人で海外駐在家族の場合は、日本での出産を希望される人が多いようです。言葉に不安があるお産は心配でしょうから、安定期のうちに日本へ戻り、産後落ち着いてから赤ちゃんとフランスに戻ってくるという人も少なくありません。
国際結婚をした日本人女性はほとんどの場合フランスでの出産を希望します。やはりご主人と遠く離れてのお産は考えにくいのでしょうね。
主流は無痛分娩
フランスの主流は、無痛分娩です。多くの人が「わざわざ痛い思いをする必要はない」と思う傾向があります。「産みの苦しみ」という感覚はあまり一般的ではありません。
ですが自然に出産したいと希望する妊婦さんもいますし、もちろん麻酔を使わない出産もできます。
無痛分娩を希望する場合は、事前に麻酔医と話し合っておく必要があります。この時に麻酔によるリスクを説明してもらえるので、疑問は解消しておきましょう。
日本ではあまり主流ではない無痛分娩は批判もありますが、産後、母体へのダメージが少なく回復も早いという利点もあるのです。
また、無痛分娩といっても子宮口がある程度開くまでは麻酔は打てないので、全く陣痛がないわけではありません。私はなかなか子宮口が開かず、5分ごとに陣痛の痛みがくる、というのを一晩経験できました。
ちなみに無痛分娩でも特別な費用はかかりません。
入院中の食事は日本人の体には不向き?
日本の産院、特に私立クリニックなどのお食事はとっても豪華ですね!祝膳として鯛が乗っていたり、出産という大仕事を終えた女性に優しくよく考えられた食事が出されています。
対するフランスでは、残念ながら食事に期待はできません。パリ郊外のアメリカンホスピタルや、リッチな私立クリニックなどではある程度の質と味にありつけるかもしれませんが、一般的な公立病院の食事にはちょっと困ってしまいます。
朝食はバゲットにバターとジャム、カフェか紅茶。昼食と夕食はバターやクリームなどを使ったお肉料理とクタクタに火が通った野菜たち、そしてパンやパスタ。
私たち日本人の体にとって、母乳が出やすいとはあまり言えない内容です。食事を持ち込んでも何も言われないのをいいことに、私は日本から来てくれた母の手料理を食べていました。
母乳ケアは病院によって大きく差がある
母乳で育てるか、ミルクか、それとも混合か。これはそれぞれにメリットデメリットがありますが、母乳の場合まず出ないことには飲ませてあげられません。母乳があまり出ないというのは、出産直後のナーバスになりがちなママを苦しませることもしばしば。
日本ではおっぱいのマッサージをしたり、食事に気をつけたりと母乳ケアをしてくれる産院が多いかもしれませんが、私が知る限り、フランスにおいて母乳育児や母乳ケアに積極的な病院はまだ少数派です。
病院によっては、「もう母乳出ないんだからミルクにしなさい」と、母乳を止める薬を処方されることも。初産の場合、産後数日では出なくても徐々に出始めることもあります。フランスでは産後入院しているのはせいぜい5日間ですから、その間に母乳を諦めるというのは正直早すぎると感じます。
こればかりは病院によるので、事前にできるだけどのような方針かを調べておくといいですね。
退院後は助産師さんの訪問、そして骨盤底筋を鍛える
順調であれば、産後4日ほどで退院します。自宅に戻ってからは、訪問助産師さんが様子を見にやって来てくれます。赤ちゃんの様子はもちろん、ママの体、特に会陰の縫合をした場合などは傷の様子も見てくれます。
子育てをスタートしたばかりで何かと不安なパパやママの相談にも乗ってくれる、強い味方。外出もあまりできない時なので、訪問してくれるのは本当に助かります。
そして産後に全員が行うのが、骨盤底筋を鍛えるペリネトレーニング。これは妊娠出産で弱った骨盤底筋を鍛えることで、尿もれや子宮が下がるなどの問題を防ぐものです。産後すぐではなく6週間後頃から始めます。運動療法士や助産師の元へ10回ほど通い、器具を使って鍛えます。
産みやすい環境がある
フランスで出産する場合、妊娠中に必要な手続きをとっておけば公立病院での出産は無料です。また妊娠後期から産後の医療費も100パーセントカバーされますし、契約内容にもよりますがミュチュエル(Mutuelle 互助保険)がある場合は、私立病院での出産も概ねカバーできます。
また出産が近くなると、アロカシオン・ファミリアル(Allocations familiales 家族手当)から年収に応じて出産準備金が支給されます。
子育てにはお金がかかります。もちろん出産だけではありませんが、少なくとも出産費用がかからないことは、経済的な理由で子供を持つか迷っている人の背中を押してくれます。
産んでいる国には、やはり産める環境があるのですね。
それではみなさん、Bonne journée!
ライター名 pompon
・渡航した年 2005年
・お住いの国 フランス
・プロフィール パリに音楽留学したのち、フリーランスとして活動、そして結婚。フランス人の夫と娘、そして猫と一緒にフランス西部の都市に暮らしています。在仏12年になりました。フランスのバカンスシステムを支持する一方で日本の温泉も捨てられないという、日仏いずれをも愛する30代です。