Bonjour!,c’est pompon!
どこの国にいても健康で元気でいられればいいのですが、病気や怪我をすることだって当然あります。今回はそんないざという時のために知っておきたい、フランスの医療についてお話ししたいと思います。
基本はかかりつけ医システム
フランスでは、かかりつけ医(médecin traitant、メディサントレトン)システムがあります。病気になるとまずこのかかりつけ医の診断を受け、それから必要があれば耳鼻科・皮膚科などの専門医(spécialiste、スペシャリスト)を紹介されます。
かかりつけ医は全科を診る一般医(médecin généraliste、メディサンジェネラリスト)から個人で選び、国民健康保険(sécurité sociale、セキュリテソシアル)に申請します。申請をしなくても診察は受けられますが、この登録をしておくと医療費の還元率が良くなるので、申請しておく方がいいでしょう。
一見面倒なようにも思えますが、様々な体の不調や病気などをまとめて一人の医師に診てもらえるので、健康状態が把握しやすいという利点があります。多くの場合家族全員で同じ一般医にかかる家庭が多いですね。
一般医は病院内ではなく普通のアパルトマンの一室などで開業しています。
徹底された分業化
かかりつけ医システムには利点もありますが、ほとんどの場合一般医のところではレントゲンはおろか血液検査や尿検査もできません。する設備がないのです。ですので、処方箋をもらって医療検査施設(laboratoire d’analyses medicales、ラボラトワールダナリーズメディカル)へ行き検査をし、その結果を持って再び一般医のもとを訪れます。検査施設は街中に多くありますが、体調が悪い時には「日本のように医師の元ですぐにできたらどんなに楽だろう」と思うこともしばしばです。
一般医の元でレントゲンやMRIを取るように指示された場合も同様に、検査施設へ自分で行き、結果を持って再び一般医の診断を仰ぎに向かいます。
また一般医もそうですが、総合病院にかかった場合でも、薬は検査同様に処方箋をもらって街の薬局へ。病院内に薬剤師がいて薬が出されることはまずありません。
とにかく徹底した分業がなされているのです。
診察も検査も予約制
そしてどこに行くにも予約(rendez-vous、ランデヴー)が必要です。一般医は比較的取りやすいのですが、風邪が流行っている季節などは翌週まで予約が取れないということもしばしばです。専門医や検査施設は基本的にランデヴーが取りにくいので、MRIなどで1ヶ月待ち、歯科や眼科の初診であれば半年以上先まで予約が取れないことも普通にあります。
同様に産婦人科も予約が取りにくいので、妊娠を希望する女性などは、いざ妊娠した時に予約が取れず慌てることのないよう、あらかじめ検査などで一度訪れておくことを勧められます。
よほど緊急を要する時などは事情を説明して融通を利かせてもらえることもありますが、運と交渉次第です。
往診してくれるSOSドクターも
かかりつけ医の予約が取れない、夜間に具合が悪くなった、そんな時のためにSOSドクター(SOS médecin、SOSメディサン)がいます。基本的には一般医の資格のある人で、自宅まで診察にきてくれるので、病院まで行けない場合などにも助かります。
救急病院は最終手段に
急を要する時、日本と同様に救急病院があります。しかしいつも人で溢れていて、特に週末などの夜間は4時間待ち、5時間待ちは当たり前です。なので具合次第では自宅でSOSドクターを呼んだり様子を見たりした方が返って悪化しない、ということもあります。
パリでは日本語の通じる医師もいて安心
色々な医療機関がありますが、渡仏してすぐやフランス語に自信がないと、うまく説明できるか、言われていることがわかるか不安ですよね。
パリや周辺であれば、日本語の通じる医師がいます。産婦人科、歯科、精神科など、在仏日本大使館のホームページでも紹介していますので、必要があれば見てみましょう。
またパリ北西郊外にはアメリカンホスピタルというデラックスな私立病院があり、日本語の通訳システムがあったり、日本人の医師がいたりと安心です。私は留学生の頃ここで盲腸の手術を受けましたが、対応も非常に丁寧で、安心して治療を受けることができました。医療費の面では高額なので、海外旅行保険に入っていて本当によかったと思いました…。
医療費負担額は少ないフランス
フランスの医療費は安く、一般医の診察は多くの医師の場合23ユーロ(3000円前後)で、セキュリテソシアルに加入していれば7割が後日返金され、任意保険に加入していればさらに残りもカバーされます。
専門医は一般医より診察代金は高額で、50ユーロ(6500円前後)以上の場合が多いですが、こちらもセキュリテソシアルや任意保険によるカバーの対象となります。
任意保険は勤め先や選ぶ保険会社などによっても内容は異なりますが、もし入院した時のことなどを考えると、月額費用がかかっても加入しておくべきでしょう。
白衣の天使とはいうけれど…
私はフランスで暮らして長くなってきたので、数え切れないほど通院し、何度か入院したこともあります。日本と大きく異なると思うのは、システムもそうですが、医療従事者の対応です。救急などではいつも人手は足りないでしょうし、毎日忙しくしていることとは思いますが、ドライな対応の医師や看護師さんも比較的多いので、「フランスの病院はこういうものなんだ」と割り切リっておきましょうね!
それではみなさん、A bientôt!
ライター名 pompon
・渡航した年 2005年
・お住いの国 フランス
・プロフィール パリに音楽留学したのち、フリーランスとして活動、そして結婚。フランス人の夫と娘、そして猫と一緒にフランス西部の都市に暮らしています。在仏12年になりました。フランスのバカンスシステムを支持する一方で日本の温泉も捨てられないという、日仏いずれをも愛する30代です。