実体験!フランスの滞在許可証 取得奮闘記!

Bonjour,c’est pompon!

フランスに暮らす外国人として多くの場合、避けて通れないものの一つが滞在許可証申請です。在日本フランス大使館で発行されたビザやそのほか必要書類を持ち、居住区ごとに手続きを行うのですが、これはまさに戦い。年々システムが変化し便利になっているとはいえ、気の重いイベントの一つです。

今回は、少し古いですが私の経験談を通してその戦いを少しご紹介したいと思います。なお年々必要書類や仕組みなどは変化していますので、手続きの際はご自身で公式ホームページなどから最新の情報を得るようにしてください。

申請するには

私は3年の留学を希望していたので、学生としての長期滞在ビザを取得して渡仏しました。そのため、決められた期間内に滞在許可の申請をする必要がありました。

私はパリから少しだけ外れた郊外に住んでいて、当時はネット予約システムなどもなかったので、手続きはパリ市内に住居のある留学生より若干煩雑でした。

パリ市内ですと学生とその他の外国人では申請場所も異なっていたのですが、私の暮らす市では全ての外国人が同じ窓口で申請し、しかも移民の多い地区だったのでその人数は膨大なものでした。

学校の登録証やビザなどの必要書類が揃ったところで県庁へ向かいます。

初めての申請

同じ市内に住む友人によると、1日がかりの作業になるということ。まず始発のメトロに乗り込みました。5時台、辺りは真っ暗です。県庁のある駅で下車すると、周囲の乗客がものすごい勢いで走り出しました。何事かと思いつつ表示に従って県庁に向かうと…走っている人の流れはどうやら私と同じ目的地のようです。

テクテク歩いて到着した時には200人以上の列ができていました。申請するための受付チケットが必要なのですが、なんとそのチケットをもらうための行列だったのです!1日に発行される数は決まっているらしく、周囲の人たちは「今日は無理だ、また明日だ」と諦めて帰っていきます。この始発からのダッシュに勝たなければ窓口はおろか建物に入ることもできないとは!
中には前日から県庁前に陣取っているツワモノもいたようです。

こうして私の申請初日はあっけなく終了しました。

実体験!フランスの滞在許可証 取得奮闘記!

なんとか申請にこぎつける

さて驚いてばかりはいられません、リベンジです。初日の失敗を踏まえて、メトロ乗車口にスタンバイからのダッシュで県庁まで走り、なんとか初日よりは早く列に並べたようです。しかしチケットはもらえるのか否か…始業までの3時間ほど、12月の寒空の下待ち続けました。

皆寒いし眠いし、次第に苛立ってきます。順番争いがあちこちで起きたり、喧嘩になったり…治安がよくない地域だったのでなおさらでしょうが、巻き込まれないようじっと身を潜めていました。

ようやく始業時刻になり、かろうじて手に入れたチケット。しかし180人待ち…本当に1日作業です。

なんとか時間を潰して待つこと数時間。いよいよ自分の順番が表示されました!見ていると、窓口の係員はお世辞にも感じがいいとは言えませんでした。強い口調やバカにしたような態度の人もいますし、書類の突きかえし方なども乱暴で、初めてのことですしドキドキでしていました。

幸い書類に不備もなかったのでスムーズに申請できたのですが、ここで一つでも不備があればもちろん1からやり直しです。並ぶのだけでもこれだけ大変なのだからきちんと書類を揃えてくればいいのに、皆いくつも書類が足りなかったり間違っていたり…だから無駄に列が長いのではないかと思いました。

申請ができたら仮の許可証がもらえます。やっと一段階進みました。

トラブル…号泣…そして優しさに触れた

滞在許可証を手に入れるためには、さらに指定された施設での健康診断が必要です。日本一時帰国を翌日に控えた日、県庁でこの健康診断の日を指定されたのですが、この時私の号泣事件が起きたのです。

健康診断に指定された日が、運悪く日本滞在中の日だったのです。これは困ったと思い、その場でなんとかその旨を伝えようとしたのですが、私のつたないフランス語と、対応の悪さで定評のある地区の県庁職員。「酔っ払ってんのかこのバカ女!さっさと出て行け!」と、マイクで館内に響き渡る大声で口汚く罵られてしまったのです。

その対応のショックと、滞在許可証をもらえないかもしれないという不安、渡仏してから不慣れな外国で何ヶ月も張りつめていた糸がぷちんと切れたようで、私は県庁から一歩出た途端号泣してしまいました。

今思えば大人が人前で大泣きしてとっても恥ずかしいのですが、その時は周りのことなんて目に入っていませんでした。

そんな時、偶然近所に住むという見知らぬ老夫婦が通りかかり、どうしたのかと優しく訊ねてくれたのです。先ほどの対応ですっかり自信をなくしていた私は「フランス語が話せない」とさらに泣いていたのですが、老夫婦は「ゆっくりで構わないから、話してごらん、何か困っているんだったら力になるから」と言ってくれました。

少しずつ落ち着いた私が理由を話すと、一緒に窓口に行ってくれました。おじいさんが手続きについて訊ねてくれている間、おばあさんは私の腕をしっかりととって、「大丈夫、大丈夫よ」と励ましてくれていました。

彼らのアドバイスによると、滞在許可証の発行に支障が出ることはなく、最悪もう一度申請すればいい(これは避けたかったですが…)とのことでした。

無関係な私のためにわざわざ時間を割いて訪ねてくれた彼らの優しさを、私は12年経った今でも忘れられません。

とうとう手に入れた!

結果的に日本からフランスに戻った後健康診断の施設へ向かったところ、驚くほどあっけなく他の日を指定してくれました。全ての必要手続きを終え、無事に滞在許可証を手に入れることができたのでした!

しかしこの滞在許可証、1年更新なのです。許可証を手にした数ヶ月後には更新手続きを始めなければなりません。これは10年滞在許可証を手に入れるまで毎年繰り返されるのです…。ああ…。

とってもとっても大変そうに書きましたが、これはおそらくフランスで最も滞在許可証手続きが大変であろう市のお話。その後筆者はパリや近郊の市、地方都市などで同様の手続きを10回ほどしましたが、こんなに大変だったことはありません。しかもこの初回申請から12年も経ちましたし、現在はネット予約が当たり前、手続きは随分と簡略化されています。

とは言え、日本の役所関係のようにきちんとはしていなくて、質問をしても対応する人によって答えが異なることは日常茶飯事、提出した書類が無くされることだってあるのです。打たれ強くなりますよ。

海外生活、楽しいことばかりではありませんが、外国人が暮らすには避けては通れません。これから渡仏されるみなさん、頑張りましょうね!

Bon courage!

ライター名 pompon

・渡航した年 2005年
・お住いの国 フランス
・プロフィール パリに音楽留学したのち、フリーランスとして活動、そして結婚。フランス人の夫と娘、そして猫と一緒にフランス西部の都市に暮らしています。在仏12年になりました。フランスのバカンスシステムを支持する一方で日本の温泉も捨てられないという、日仏いずれをも愛する30代です。