Hello y’all! I’m Aqua.
突然ですが、「ブータン」と聞いてみなさんは何をイメージしますか?ブータンという国名は、今や日本では有名ですよね。ブータンの国王がきれいな王妃様を伴って来日された際には、「アジアの若く美しい国王と王妃」という神秘的なイメージを抱いた方も多いと思います。
また、先代国王の時代から「国の指標は、GNPではなく、GNH(国民総幸福量)だ!」と「国民の幸せ」を第一に考えた国策を模索している事などは世界的にも有名です。でも、実際はどんな国か、どこにあるのか、ご存知の方はそう多くはないのではないでしょうか。
私はブータンに2年間住んだ経験がありますが、渡航前「ブータンに行く」と周囲に話した時、反応は決まって「へ~…あの”幸せの国”の?」でした。それ以上でも以下でもなく。
バラエティ番組などで取り上げられることも増えてきたブータンですが、同じアジアなのにまだまだ神秘のベールに包まれています。そこで、私がブータンに住んでいた時に実際に経験した体験談や思った事などをご紹介したいと思います。
ブータン生活は覚悟が必要です
幸せの国、桃源郷…。ブータンにそんなイメージを抱かれている方にはごめんなさい。ブータンはまぎれもなく「発展途上国」です。
ブータンはインドと中国の間を隔てるヒマラヤ山脈の山の中にあります。唯一の国際空港「パロ空港」も、首都ティンプーも、標高2000メートル越えです。
そんな高山の中なのでインフラもなかなか行き届かず、交通機関もかなりひどいです。ブータンの国土面積は九州程度であるにも関わらず、国際空港や首都のある西部から東の端に移動するのに、車で2日かかります。それも、数千メートルの山肌を通るわけですから、道路の8割は断崖絶壁です。私も谷間の川にトラックが落ちているのを何度か見たことがあります。
と言っても、日本人でブータンに住んでいる方はほとんど西部の首都圏に集中しています。あまり東部に行くことはないのは事実。ですが、もし「幸せの国への移住」を検討してらっしゃる方がいれば、「ブータン生活の現実は厳しい」ということを認識しておいていただきたいなと思います。
今までリゾート地や欧米などインフラの整った国にしか行ったことの無い方には衝撃が強いかもしれませんが、サバイバルやアウトドアに抵抗の無い方や、山や自然が大好きと言う方には、ブータンライフは適度の刺激があって楽しいかもしれません(笑)
なお、インフラは整っていないけど、よっぽどの山奥でなければ携帯電話やインターネットが使えます。WiFiが使える店も首都圏は充実してきました。
給湯設備がなくてお湯は出ないけどインターネットはできる…お風呂はないけどテレビはある…そういう家もたくさんあって、私もなんだか不思議な気持ちになったものです。
ブータンの食事は唐辛子で出来ている
私の場合は仕事で派遣されたので到着後の生活は保障されていたため、渡航前にまず不安だったのは食事でした。
私が渡航準備していた当時、手に入ったブータンの地球の歩き方は薄っぺらく、食事はただ「辛い」としか言及されていませんでした。「辛いってオイオイ…」とただいたずらに不安を煽られただけで渡航したわけですが、本当に辛いです。
後で知ったことですが、ブータンの食事は実は世界一辛いとも言われています。現在の地球の歩き方には「四川料理のごとく辛い」と書かれていますが嘘です。四川料理のような「旨み」とか「コク」とか「出汁」とか、そういう味のある辛さではなくハバネロみたいな攻撃的な辛さです。
ブータン人は唐辛子をこよなく愛していて、大中小、赤青、生・干し…、そのバラエティの豊富さたるや日本のキノコのごとし!?とにかくどんなおかずにもほとんど唐辛子が入っているのです。ちょっと小腹が空いたときのスナックも唐辛子フライ。カンティーン(食堂)の付だしは「生唐辛子と塩セット」。
私は元々辛いものは好きだったので渡航前からそこまで身構えてはいませんでしたが、渡航したばかりの頃はこの唐辛子にずいぶん打ちのめされました。
不思議なもので生活するうちにこの辛さには慣れます。中には自らこの唐辛子料理を自炊して生活するようになった日本人の友人もいました。私は流石にその域には踏み入れませんでしたが。
「シーシー」言いながら辛いおかずでご飯をほおばる。それがブータン流の食事なんです。辛いのが苦手な人にはちょっとつらいかもしれませんが、慣れると刺激が楽しくなります。
ちなみに、辛いのがダメな人は外食の際に「less spicy」とオーダーすれば唐辛子控えめにしてくれます。それに首都圏は外国人も多いので、観光客向けのレストランはそこまで辛くないでしょう。ただ、現地のお友だちの家にお呼ばれしたとき等は頑張りましょう。
ワークライフバランスを見直すきっかけに
私はブータンに行ってから日本人の働き方に疑問を持つようになりました。
ブータンに行くまでは朝から晩まで働くことに何の疑問も持っていませんでしたが、ブータンでは定時の4時頃に帰宅してからは特にすることもなく、職場の友人と散歩に出かけたり市場に買い物に行ったり、限られた材料で日本食やお菓子の手作りに挑戦したり人の家にお呼ばれしたりと、本当にのんびりした生活でした。
日本では「神聖な職場」などという表現をすることがありますが、ブータンでは職場も生活の延長線上にあり、切り離したりしません。出産で休んだり子連れで来たりは当たり前だし、ベビーシャワーに職員全員で詰めかけたり、祝日を職場で祝ったりもします。日常でも毎日ティータイムがあったり、手が空いたら日向ぼっこや井戸端会議したりします。
これはブータンが小さなコミュニティだからできることかもしれませんし、企業の規模が大きくなるほど線引きや規則を徹底しなければ収拾がつかなくなるのもわかります。それでも日本人は働きすぎだし、働くことに潔癖すぎだと思うようになりました。最近もプレミアムフライデーのニュースを目にしましたが、なぜわざわざ休みを設定しないと休めないのか、日本人ながら不思議です。
もちろん仕事をするために派遣された身としては「のんびりしていいのか」とか「(ブータン人)もっとちゃんと働けよ~(涙)」と思わなかったわけではありません。でも有り余る時間と生活スタイルの違いを目の当たりにし、自分の働き方やちょっと大げさですが今後の人生についても見直す良いきっかけになりました。
ブータン生活を楽しむ秘訣
2年間の生活で大変だったことも悩んだこともたくさんありましたが、そんな中気持ちを明るくしてくれた瞬間は人との交流の時間でした。
ブータンは親日国で、多くのブータン人は日本が大好きです。日本人に対してはもちろん、基本的に外国人には優しく親切に接してくれます。
そんなブータン人と一気に打ち解ける方法の一つが、「ブータン語(ゾンカ)で話す」こと。
基本的には英語が通じるので、ブータン語を話さなくても生活に支障はありません。でも、外国人が「コニチワ~」と挨拶してくれたら嬉しくなりませんか?ブータン人も同じなんです。ぜひ、地球の歩き方や旅の指さし会話帳などを見ながらで良いので、ゾンカで話しかけてみてください。
クズザンポーラ!ニギ ミン Aqua インラ!
(こんにちは!私の名前はAquaです)
これだけで、「えー!ゾンカしゃべれるの!?」と、とても喜んでくれます。
私は一度、タクシーに乗った時に「眠い~」とゾンカでつぶやいたら運転手さんとゾンカの話になり、最終的にタクシー代がタダになったことがあります(笑)
こういう面白い交流は現地語がある地域でしか経験できないと思います。アメリカに行って「ハロー」と言ったところで誰が喜んでくれるでしょうか?(笑)
ブータンで生活するのは、日本人にとっては大変なことがたくさんあるのも事実ですが、こういう地域の人との小さな交流が楽しめるのがブータン生活の魅力の一つだと思います。
いきなり移住はちょっとハードルが高い国かもしれませんが、機会があればぜひ一度観光に訪れてみてください。
それでは、Have a great day!
ライター名 Aqua
渡航した年 2013年〜2015年
お住いの国 ブータン
公用語 英語、ゾンカ
プロフィール 国際ボランティアに参加し、ブータンの地方高校へITインストラクターとして赴任。2年の任期満了後、帰国。現在はアメリカに留学し、舞台技術を勉強中。バレエなどのダンスが趣味。