Hello y’all! I’m Aqua.
マサイ族ってご存知でしょうか?私は全然詳しくないのですがアフリカの原住民ですよね。狩りが得意だとか、何キロメートル先のウサギが見えるだとか、原始的で、かつすごい身体能力を持った部族、というイメージです。そしてそんな彼らの服のポケットには意外や意外、iPadが入っている…そんな噂を聞いたことないでしょうか。
マサイ族の話が本当かどうかは知りませんが、実はブータンでも同じようなことが起きています。
ヒマラヤの秘境、桃源郷…と言われるブータンにもテクノロジーの波は着実に押し寄せています。地続きのインドから何も入ってこないはずもありません。ブータンにもスマホやタブレットはどんどん普及して、民族衣装の懐にスマホ…お坊さんの手にタブレット…という姿は日常茶飯事です。
いわゆる発展途上国であり、お湯の出ない家や水道の壊れた家もたくさんあるブータン。それでもたいていの人がテレビやスマホは持っているというギャップ。
今回の記事では、「ブータン人は何にお金を割くのか?」についてお話していきます。
家電は優先順位が低い
ブータンの家で、ガス・水道・電気・電話やインターネット、などの生活に必要なインフラ設備が満足に行き届いている家はほとんどありません。
ガスはボンベを使うので、ボンベの中身が切れない限り大抵は使えますが、電気はしょっちゅう停電します。水もしょっちゅう断水します。インターネットは停電したらもちろん使えません。
お湯は「ギザ」と呼ばれる電気給湯器が備え付けられている場合に限り使えます。が、ギザを付けるのにもお金がかかるしメンテするにも部品のあまりない地方では不便だし、停電・断水したらどうせ使えないし…ということで持っている家庭は田舎に行くほど少なくなります。
ギザの無い家庭ではお湯を沸かすのはコンロか薪ストーブ(ボカリ)。お風呂に入る際には電気コイルなども使用します。余談ですが、お風呂のような水気の多い場所で電気コイルを用いるために、感電死するという弊害があるようで、なんとか改めてほしいものです。
このような状態なので、あまり電化製品は活躍しません。ブータン人が持っている家電と言えば、炊飯器(炊く・保温の2機能のみ)、簡易調理器(ホットプレートの深いバージョンみたいなもの)、電気ストーブ、このあたりが三種の神器ではないでしょうか?
お金に余裕のある人はアイロンや洗濯機、冷蔵庫、女性ならヘアアイロンなども持っています。ただしこれらの物は「無くても困らない」か、「アナログでなんとかできる(洗濯は手洗いなど)」ので、よほどのことでもないと買わないようです。
ローン組んででも買う3つのモノ
それでは、家電や給湯器などを二の次にしてもこれだけは外せない!というアイテムはなんでしょうか?
それはパソコン、スマホやタブレットなどの通信機器、そして車、だと思います。またテレビも人気で、立派な薄型テレビを持っている家庭もあります。
パソコンやUSBドライブなどはかなりの確率で持っています。田舎の片隅のレジも無いような商店(お会計は暗算…)で、小さい子にタブレットを渡して遊ばせながら店番をしているオバチャンの姿もよく見かけましたね。
昔のPHSのようなケータイを持っている人もいますが、もうスマホの普及率は相当なものだと思います。iPhoneなどアップル製品は正規店が近くに無いためかあまり見かけず、NOKIAが一番出回っていたように感じます。
後述しますがブータン人の一般的なお給料は、パソコンや車などどうやって買うのだろうというくらい低いです。もちろん物価も安いので国内で生活するのはそれでもいいのですが、車を買うとなるとそれなりにお金が要ります。ブータンに輸出されたら車が突然安くなる――なんてはずありませんからね。
そこでブータン人はローンを組んだり、親戚中からお金を借りたりもらったりして車を購入するようですが、それでも日本人の感覚からすると「それ現実的か?」とちょっと引くくらい無計画。平気で何十年ものローンを組むのですが「一生かけて返す気!?」という感じです。
ちなみに、私が友人宅に上がって驚いたものNo.1は、ホームシアタースピーカー!実際使っていたのかどうかは分かりません。メーカーはPanasonicのようでちょっと違う名前でした。覚えていないのですが…。そんな友人は「あなたが帰国する時、洗濯機売ってくれない?」と言っていました。イヤイヤイヤ、って感じですよね^^;
ブータン人の一般的な収入と車
ブータンの通貨単位は「ニュルタム」と言います。1ニュルタムは大体1.7円ほどです。
私の周りにいた教員の場合、月収は大体15000ニュルタムということでしたので、25000円ほどということですね。月収、3万円以下です!教員の中にはタクシー運転手など副業を持っていたり、夫婦とも働いていたりするケースが多いのですが、それでも世帯収入10万円いかないのではないでしょうか?
ブータンの一般的な家庭用冷蔵庫は2ドアの小さなもので、大体13000ニュルタムほど。洗濯機も全自動なら20000ニュルタムくらいします。
そんな家電は高いと言う理由で買わない一方で車を買うと言うのですから不思議ですよね。またこの収入でもローン組みさえすれば車が買えてしまうということに私が驚いた気持ちもご理解いただけるかと思います。
ただし、ブータンを走る車に多いのはマルチ・スズキ(インド)の小型車です。恐らく一番安く、インドからも輸入しやすいのだと思います。またヒュンダイも多いです。
参考のためにマルチ・スズキの価格を調べてみたところ、安価なものでも40~50万円くらいはするようですね。ブータン人は何ニュルタムの何年ローンを組んでいるのか、気になりますね。
ちなみに車の最上級はどうやら「トヨタのランドクルーザー」のようで、トヨタは高級車の代名詞です。王族や官僚なども乗っている「憧れの車」のようでした。でもそれはさすがにローンを組んでも買えないようです。
助け合い施し合う精神
最後に全く別の話題になってしまいますが、ブータン人が誇るべきだと思う素晴らしい点をひとつご紹介します。
それは「ブータンには物乞いがいない」という点です。
ブータンとインドの国境の町に行くととてもよくわかります。ブータンに住んでしばらくした頃に、国境の町に買出しに行った時のこと。国境は簡単に越えられるので足を伸ばしてみたのですが、一歩インド側に足を踏み入れるやいなや、小さい子供を抱えた痩せた女性が手を差し出してきました。お金をくれと言うのです。
それまでブータンでは全く見かけなかったこの光景を目の当たりにし、「ブータンだって決して裕福な国じゃないのに」とこの明らかな違いにショックを受けました。その女性には、連れのブータン人が少額を渡していました。
ブータンでは物乞いがいないのでこのように直接お金を施している光景は国内では見たことありません。ですが、独り身の老人や貧しい家庭などが無いはずもないので、そのような人たちには声を掛け合って助け合いながらコミュニティを保っているのだろうなと感動しました。
また寺院へのお賽銭なども回り回って炊き出しなどの救済活動に当てられているのではないかなとも想像しています。ブータンには仏教が深く根付いており普段からよくお寺にも参拝します。それに職場など団体でも何かというと「ドネーション(寄付)」を募っています。
ドネーションは貧困救済に限らず、「同僚がタイに研修に行く」「生徒を連れて遠征試合に行く」など身近なところでもドネーションを募り、助け合いながらお金を工面します。
このような文化が背景にあるので、例えばローンを組んで高い買い物をする時も、親戚や友人・同僚など周りが助け合ってお金の工面に協力してくれるのかなぁ、なんてつい納得してしまうのでした。
それでは、Have a great day!
ライター名 Aqua
渡航した年 2013年〜2015年
お住いの国 ブータン
公用語 英語、ゾンカ
プロフィール 国際ボランティアに参加し、ブータンの地方高校へITインストラクターとして赴任。2年の任期満了後、帰国。現在はアメリカに留学し、舞台技術を勉強中。バレエなどのダンスが趣味。