ヒマラヤの秘境ブータンに移住をすると、器が大きくなるかもしれない?!

Hello y’all! I’m Aqua.

ご婚約を発表されて一躍メディアの注目を浴びた眞子さまですが、最近ブータンをご訪問されたというニュースはご覧になったでしょうか?

美しい装飾の施された建物や緑あふれる自然を背景に、テレビに映る清楚なお着物姿の眞子さまと、きらびやかな民族衣装に身を包んだ国王ご夫妻とその第一子であられる王子様。このニュースで、ブータンに興味がわいたという人も多いかもしれませんね。

今回はそんなブータンでの生活はどんなものなのか、一般的なことから個人的な感想まで少しご紹介したいと思います。

ブータンの気候と地形…とりあえず、山!

ブータンはとても小さくて、地図で探すのは大変です。面積は日本の九州くらい。インドと中国という(あまり仲の良くない)大国に囲まれており、ちょっと離れた西の方にはネパールがあります。ネパールと言えばヒマラヤトレッキングでも有名な高山地帯ですね。ちなみに紅茶で有名なインドのダージリンもこのあたりです。

そんなヒマラヤ山脈のど真ん中にあるブータンは、国全体が富士山級の山々に囲まれた地形のため、平らな場所を探すのが大変。首都ティンプーは標高2300mほど、空港のあるパロと言う県も2000m越えです。蛇足ですが、平地が確保しにくいブータンは空港の滑走路がとても短く、「世界一着陸が難しい空港」とも言われているとか。

ブータンでまず気を付けろと言われるのは狂犬病と高山病です。

殺生をしないブータンではハエや蚊すらも殺すことを避けます。野良犬の殺処分なんてもってのほか。頑張って去勢処理をしているそうですが、野良犬は国中あちこちにいますので狂犬病は特に注意が必要です。

またほとんどの土地が2000m~3000mの間にありますので、高山病はブータン到着直後からかかる人もいるようです。健康な人でもならない保証はないので、特にトレッキングをする場合などは気を付けなければなりません。

ブータンの中には標高の低い土地もあり、たとえば首都の東に位置するプナカという県は1200m程。また、首都からず~っと南に下りプンツォリンというインド国境付近の県まで行けば、標高は200m程です。

実はブータンは沖縄と同じくらいの緯度にあるので、そのような標高の低い土地は、夏は暑く冬でも暖かい気候です。ですが、やはり2000mを超える土地夏でも涼しく、冬は非常に寒くなります。ただし冬は乾季にあたりますので、あまり大雪が降るとか雪が積もって大変ということは都市部ではありません。ただ気温差のある都市間の移動をするときは服の選択に困るという地味な悩みも出てきます。

「頭を雲の上に出し」という富士山の歌のとおり、ブータンも雲の上にあるようなもので、直射日光は厳しいです。冬も意外と日が照っている時は暑いとすら感じます。夏でも冬でも、直射日光による日焼けには要注意。「山の天気は変わりやすい」というように照ったり陰ったりの変化も非常に激しく、Tシャツなの!?ダウンなの!?という日もしばしばありました。

ちなみに私の滞在していたチュカ県はこの「雲」が溜まりやすい標高だったのか地形だったのか、とにかくいつも霧がかかっていました。このような土地は家中カビだらけになったり外で蛭(ヒル)にやられたりするので雨季は気が滅入りましたね…。

ヒマラヤの秘境ブータンに移住をすると、器が大きくなるかもしれない?!

ブータンの家の造りは…ちょっと残念

冬の寒い地域に住む人にとって悲しいのは、ブータンでは暖房器具がほとんど役に立たない事。ブータン伝統の薪ストーブ「ボカリ」は暖かいのですが、本体や薪を買うお金が無いとなかなか手が出ませんし、独り暮らしの家にはあまり効率的でもありません。

ブータンでは比較的新しい建物の場合、インド式の造りをお手本に建てられています。もちろん装飾などはブータン伝統的な様式を取り入れるのですが、構造はインド式で、コンクリートでできています。インドは暑い国ですから暖房効率とか断熱とか、全く考慮されません。そんな構造をお手本にした家なので、電気ストーブを買っても熱が逃げてあまり役に立たないのです。

私の住んでいた家はさらにひどく、隙間だらけで壁には大きなヒビまでありました。寒い中ひたすらストーブの前で縮こまっているというのが冬の私の姿でした。

ブータンの犯罪件数は増えている?

基本的に海外旅行ではそうですが、発展途上国に行くとなるとますます心配なのが「治安」ですよね。幸いなことにブータンの治安は比較的よく、普段あまり気にすることはありません。それでも最低限の注意は必要です。

ブータン人には真面目な仏教信者が多く、日本の道徳観と似たような価値観を持っていると思います。私の知り合いの日本人で、小銭とケータイ(ピッチみたいな旧型)の入った財布をバスに忘れてしまったけど後日戻ってきた、というようなことがあったそうです。

置き引きやスリなどはほとんどありませんが、それでもあまりに大金であるとか、カメラやスマートフォンのような高価なもの、ブータンでは目にしないような珍しいもの(日本の製品など)を持っている時は注意が必要でしょう。

特に首都圏は最近少し事情が変わってきて、就職難で職に就けなかった若者などによる盗難などの犯罪が残念ながら増えているようです。レイプ事件や傷害事件などもあります。

日本人が住んでいると分かると、目を付けられる可能性は高くなります。首都やパロでは残念ながら私の知り合いや友人が被害に遭い、留守中に窓を割られてパソコンなど全て盗まれたとか、在宅中にベランダから侵入されそうになったとかもありました。

そういう私も実は一度、留守中にお風呂場の窓を破られそうになったことがあります。どうやら無作為に狙った空き巣だったようで、近所の商店からはお金が盗まれてしまったようですが、幸い私の家は被害はありませんでした。チュカは首都圏ではありませんが、インドと首都を結ぶ主要幹線道路上にあるので往来は激しい地域です。

立派な家ならドアや窓も頑丈ですが、大抵の家のドアは木製。カギも南京錠が主流で、防犯対策などはほとんど施されていません。

このようにブータンと言っても決して油断はできないのも事実。観光地に行く場合などは通常の警戒心は持っていた方が良さそうです。

ヒマラヤの秘境ブータンに移住をすると、器が大きくなるかもしれない?!

人々の暮らしは快適なの?

気候や地形、治安など、生活の基盤を大きく左右する要因を書いてきましたが、もう少し身近な「日々の暮らしやすさ」について少しだけ触れたいと思います。

ブータンの生活はハッキリ言って不便です。物資もサービスも何にもありません。

スーパーは首都以外には無く、地方では商店に行くしかありません。地方の商店で手に入る「日本食材」は醤油くらいです。肉は、衛生面が気になるならほぼ諦めることになるでしょう。時には卵が無いなど、食料調達そのものが怪しくなります。

レストランに入って、料理が出るまでに30分かかるなど普通です。よほどトレーニングされた、星のつくようなホテルでもなければ、スタッフの対応にホスピタリティの「ホ」の字も求めてはいけません。(フレンドリーでないという意味ではありません)

自家用車やチャーターが無い場合、移動はタクシーを使うことになります。都市間を移動するタクシーは基本、お客を3~4人乗せるまで出発しません。急いでいる場合は3~4人分の金額を払うなど、交渉する必要があります。

いかがでしょうか?ブータン、不便そうですよね。でもそれは日本人の目から見た不便さだとも思うのです。

ブータン人ももちろん寒い時は「寒い~!」と言いますし、必要な物が手に入らない時は「何もできない、どうしよう~」となりますが、だからといって毎日「不便だ不便だ」とネガティブに暮らしている人なんていません。

ブータンでは、できないことや手に入れられないものは、それはそれ。しょーがない。家族は側にいるし今日の食べ物はあるし、今あるものだけで十分幸せに生きていけるわ~という感じでしょうか。

ブータンに住む日本人の間では「足るを知る」という言葉がよく交わされました。

ブータンは日本人にとって「住みやすい」と言い難い部分もありますが、反面「しょうがない、日本じゃないんだから」と悟ったり、今まで考えもしなかった工夫を凝らしたりと、「あるものでなんとかしよう」という気になります。私も生活力が上がった気がしています。

日本に帰ってから目にする便利すぎるサービスや商品は、どれも本当に魅力的で私も大好きなのですが、「無くても生きていける」のも事実。「あったら嬉しいなぁ」という感じです。それは日本にいただけでは気づけなかったと思います。

今はアメリカに住んでいますが、在米の日本人で「味噌汁が恋しい」とか「日本食レストランに行きたい」とか言う人は多いですが、正直私は「無くても生きていける」と思っています。

ブータンに限らず外国の生活は100%快適ではないかもしれないけど、その環境の中で「日本ならこうなのに!ありえない~!」と思うか、「そうきたか…。じゃあこうしてみようか」と考えるか、結局住みやすさの基準はその人の気持ち次第なのかなぁと思うのでした。

なお、首都の発展ぶりは目覚ましく、日本食材(質・価格はさておき)も少しずつ手に入るものが増えていますし、今ではラーメン店が出店したそうです!

中華料理屋も無く、ピザかハンバーガー、タイ料理が高級レストランだったブータンに、また新たな選択肢が増えてとても嬉しく思っています。都市間道路も少しずつ整備されているらしく、これからもどんどん発展していくと思います。

それでは、Have a great day!

ライター名 Aqua

渡航した年 2013年〜2015年
お住いの国 ブータン
公用語 英語、ゾンカ
プロフィール 国際ボランティアに参加し、ブータンの地方高校へITインストラクターとして赴任。2年の任期満了後、帰国。現在はアメリカに留学し、舞台技術を勉強中。バレエなどのダンスが趣味。