医療費無料のブータンの病院事情!でもちょっとホラー?

Hello y’all! I’m Aqua.

みなさん、ブータンでは実は医療費がタダってご存知でしたか?一般市民は病院に行ってもお金を払わなくていいんです。ビックリですよね。

その代わり消費税20%とか…?いやいや、バーコードリーダーやレジのある「スーパーマーケット」が首都にしかないブータンで、私は消費税の存在なんてあるのかないのかも分からなかったです。地方で買い物をしている分には恐らく不要な概念でしょう。

外国に行った時、もし体調を崩したら病院にお世話になることになるので、病院事情は気になりますよね。今回は、ブータンの医療機関について書いていきたいと思います。

ブータンのちょっと特殊な病院体系

ブータンにある病院はほとんどが国立です。私立の病院はほとんどありません。首都にある病院は「JDWNRH:Jigme Dorji Wangchuck National Referral Hospital」と言います。最初のJigme Dorji Wangchuckは三代国王の名前です。Referralとは「推薦」という意味ですが、ここでは「専門医への紹介」つまり「搬送先」という意味合いになります。

このJDWNR病院がブータンのメインの病院であり、ブータン医療の中心地です。地方には少し規模は小さくなりますが「Referral病院」が2つあり、その下に所属する形で、各県に1つくらいの割合で通常の病院があります。器具や人員不足のため、難しい病気やけがの場合は地方では診られないので、搬送が必要な場合は定められたReferral病院に送られることになります。

また各病院から遠い地域には「BHU:Basic Health Unit」という診療所が点在しています。BHUには常勤の医師がいることもありますが、看護師だけで運営されている場合もあります。ここでは簡単な診察が受けられます。

日本なら「○○内科クリニック」とか「××耳鼻咽喉科」とか、診療科ごとの病院もたくさんありますが、ブータンは基本的にいわゆる総合病院となります。どんな病気でも歯科でも出産でもとりあえず各地の診療所か病院に行くことになります。

そして冒頭でも触れた通り、ブータンは病院で受診してもお金がかかりません。医療サービスは全て政府によって運営されているので、特殊な医療措置を受けない限りは外国人も受診は無料です。

蛇足ですがブータンでは教育費も無料です。私立の学校はこの限りではありませんが、ブータンにある学校はほとんど国立。学用品や制服は各自で準備しなければならないのですが、教科書は無料で貸与されます(学年末に返却)。

発展途上国というと「教育を受けられない子供がたくさん」「薬代を払えなくて病気を治せない」などのイメージがありますが、ブータンは国民のことを考えてこんな政策をとっているんですね。さすがGNH(国民総幸福量)を掲げる国です。

医療費無料のブータンの病院事情!でもちょっとホラー?

勇気がいるかも…?受けられる医療サービス

それでは無料で受けられる医療サービスとは、どんなものがあるのでしょうか。

ブータンで西洋医学を実施する医療機関が導入されたのは比較的新しく、それまでは伝統医学・漢方などを用いた東洋医学が主流だったようです。

各病院でも、西洋医学の診療科と、伝統医学の診療科が同じように設置されているようです。首都ではこの伝統医学の科は併設されておらず、伝統治療院という別の施設が存在します。

上でも少し触れましたがブータンの病院は歯科も含めた総合病院です。虫歯でも出産でも健康診断でも、最寄りの県病院に行くことになります。

しかし何でも治せるかというとそうではありません。ここで忘れてはいけないのは、「ブータンは発展途上国」ということ。つまり、医療サービスも決して万全ではないということです。無料ではありますが、決してハイクオリティな医療とは言えません

施設数も機器も十分ではありませんし、医療従事者の教育もまだまだ発展途上です。だからこそ国際ボランティアなどが技術移転やアドバイスなどのために派遣されているのです。

特に外科などの高度な技術が必要で人命にかかわる治療の場合は、各県の病院では対応できないこともあります。その場合は首都のJDWNR病院に送られたり、状況によってはインドやタイなど外国の病院で治療しなくてはならないのです。

私の知り合いの日本人は、緊急でない場合はガマンしてわざわざ日本に帰国して治療していました。また、ブータンで歯科治療を受けた知り合いは、数か月程で詰め物が取れたと言っていました。しかも詰め物をする時に噛み合わせを見ると思うのですが、「詰め物の方じゃなく自分の歯の方を削られた」と言っていました…ホントなら怖いですね…。

私自身は健診以外でブータンの病院にお世話になることはありませんでした。一度ひどく虫歯が痛んだことがありましたが、臆病者だったもので、上のような日本人の体験談を聞いていたので怖くてブータンの病院に身を任せることができませんでした…。幸いにも(?)、ちょうどタイへの旅行を計画していたので、タイの歯医者を探して治療してもらいました。汗

なお、JDWNR病院には京大病院の援助によってほとんど常に日本人医師が派遣されています。派遣された医師の科にもよりますが、治療の相談にのってもらえるかもしれません。

なかなか難しいブータンの医療現場

ブータンではあまり「使命感」「責任感」を持って仕事にバリバリ取り組むという風潮はありません。言われたことをやるか指示を待つ人が多く、その指示も徹底して実践されていないことも残念ながらあります。

例えば病院では衛生を徹底しなければなりません。また血液の処理なども適切に行うことが大切です。にも関わらず病院が不衛生だったり、普通のゴミ箱に使用済みの注射針や血液のついた綿などが捨ててあったりすることも、地方の病院ではあるそうです。

また、ブータンのほとんどの仕事場では「ティータイム」があります。恐らく医療現場でもあると思います。ティータイムは普通、みんなでお茶を囲む和みの時間なのですが、急を要する・人命にかかわる状況が起こり得る病院ではいかがなものかと思うことも正直あります。患者を置いてスタッフ全員がお茶をしているなんて、ちょっと考えられないですよね。反面、ブータン人にとってお茶の時間が大切なのも分かります。「シフト制」という考えはあまり根付いていないので、ブータンの文化に合った改善策があればいいなぁと思います。

病院のようなちょっとしたミスが命取りになってしまう場所で上のような状況は困るのですが、それが当たり前の文化の中で無理矢理に意識改革を起こすことは非常に難しいですよね。また「どうしてそれが必要なのか」または「なぜそうしなければいけないのか」ということを知らない場合もあり得ます。

ボランティアや京大の派遣医師が今もどんどん活躍していますが、ブータンの医療現場の進歩は長い目で見る必要があるようです。次世代の人材につなげるため、医療現場だけでなく医療従事者を育てる教育の場の改善に尽力しているボランティアもいます。

医療費無料のブータンの病院事情!でもちょっとホラー?

ブータンらしい医療の発展を

一般的に、発展途上国で見られる医療サービスの形態は、「外国人・要人用の高い品質の病院(受診料高い)」と「庶民向けでレベルも価格も低い診療所」に二極化されるそうです。その点ブータンでは誰もが平等に医療を受けられる一方、突出した高品質の医療を受けられる機関も存在しません

国土や人口が小さい国だからこそ「無料の国立病院」というシステムが成り立っているのかもしれませんが、低所得層にも医療が提供されるのでそれはそれで非常に素晴らしいシステムだと思います。

ブータンにはブータンの文化があるので、例えば「ティータイム全面禁止!」「勤務中は同僚と和むの禁止!」なんていうのは決していい解決策にはなりません。ブータン人にも馴染めて、効果的に状況を改善できる対策があればいいなぁと思います。

「無料の医療サービス」を維持しつつ、少しずつでも、医療従事者の意識改革が進んで医療技術がアップしていくと最高の福祉国家になれるんじゃないかなと、素人考えながら期待しています。

それでは、Have a great day!

ライター名 Aqua

渡航した年 2013年〜2015年
お住いの国 ブータン
公用語 英語、ゾンカ
プロフィール 国際ボランティアに参加し、ブータンの地方高校へITインストラクターとして赴任。2年の任期満了後、帰国。現在はアメリカに留学し、舞台技術を勉強中。バレエなどのダンスが趣味。